江戸川区 西葛西 日本糖尿病学会「糖尿病専門医」

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妊娠と血糖値の関係


本日は妊娠と血糖値の関係についてお話をしようと思います。図1:妊娠時の糖代謝異常の問題点

妊娠中は血糖値が上がりやすい体の仕組みがあり、血糖値が高いと母児ともに悪影響があるため注意が必要となります。具体的に一つずつお話をしていこうと思います。

①妊娠中に血糖値が上がりやすいのはどんな人?

全妊婦さんの12〜15%程度に糖代謝異常があると報告されております。
もともと肥満の方、血縁のご家族に糖尿病の方がいる方、以前の妊娠で大きな赤ちゃんを産んだことがある方、流産・早産の経験がある方、羊水が多いと言われたことがある方は妊娠糖尿病になりやすいと言われております。

②妊娠中は皆、血糖値が上がりやすい

妊娠中は胎児にしっかりエネルギーを回す必要があるため、インスリンが効きづらい体質(インスリン抵抗性)に変わり、母体の糖の取り込みを減らしてその分を胎児に糖を回すようになります。
これは血糖値が正常の方(正常耐糖能の方と表現します)でも起こる現象です。
妊娠糖尿病・糖尿病合併妊娠の方は、もともとの糖代謝異常により血糖値が高いのに加えて、妊娠時のインスリン抵抗性にて血糖値が更に上がりやすくなります。
胎盤由来のホルモン等によりインスリン抵抗性を生じ、特にhPL(ヒト胎盤性ラクトーゲン)は胎盤が完成する妊娠中期(15~20週)ごろから分泌が増加するため、妊娠中期以降血糖値がより上がりやすくなります。

③妊娠糖尿病と糖尿病合併妊娠はどう違う?どうやって診断する?

<検査手順>
妊娠初期に随時血糖値100mg/dl以上→ スクリーニング陽性となり、75gブドウ糖負荷試験を行います。
75gブドウ糖負荷試験 1点以上陽性→ 妊娠糖尿病の診断

75gブドウ糖負荷試験で異常なしの場合、妊娠中期に50gグルコースチャレンジテスト→ 140mg/dl以上でスクリーニング陽性となり、75gブドウ糖負荷試験を再度行います。
75gブドウ糖負荷試験 1点以上陽性→ 妊娠糖尿病の診断

このように、妊娠初期と血糖値が上がりやすい中期の2回に分けて検査を行うことにより、見逃しが防げるようになります。

<妊娠中の糖代謝異常>
妊娠中の糖代謝異常には以下の3つがあります。
❶妊娠糖尿病
❷妊娠中の明らかな糖尿病
❸糖尿病合併妊娠

妊娠糖尿病とは「妊娠中にはじめて発見または発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常であり、妊娠中の明らかな糖尿病、糖尿病合併妊娠は含まれない」と定義されます。
過去の様々な疫学研究から、本物の糖尿病(正式な表現ではありませんが分かりやすくこのように言い換えております)より低めの数値の時点で母児の合併症リスク等が上昇することが分かっており、本物の糖尿病より厳しい基準で妊娠糖尿病の診断基準(下記)が定義されております。

【❶妊娠糖尿病】
75gブドウ糖負荷試験において次の基準の1点以上を満たしたとき
1.空腹時血糖値 ≧ 92 mg/dl
2.負荷後1時間値 ≧ 180 mg/dl
3.負荷後2時間値 ≧ 153 mg/dl

【❷妊娠中の明らかな糖尿病】
1.空腹時血糖値 ≧ 126 mg/dl
2.HbA1c ≧ 6.5%
※随時血糖値≧200mg/dlあるいは75gOGTTで2時間値≧200mg/dlの場合、妊娠中の明らかな糖尿病の存在を念頭に置き、1または2の基準を満たすかどうか確認する。

非妊娠時の糖尿病の診断基準には、随時血糖値や負荷後2時間血糖値≧200mg/dlとの基準がありますが、なぜ随時血糖値や負荷後2時間血糖値≧200mg/dlで判断しないのか?という点について説明しますと、妊娠中、特に妊娠後期は妊娠による生理的なインスリン抵抗性の増大を反映して糖負荷後血糖値は非妊時よりも高値を示すため、随時や糖負荷2時間後の200mg/dl以上の基準は用いない。となっております。
分かりやすく表現すると、妊娠の影響で食後血糖値が上がりやすくなってしまっているため、食後血糖・糖負荷後血糖値は基準に用いない、ということになります。

妊娠中の明らかな糖尿病には、妊娠前に見逃されていた糖尿病、妊娠中の糖代謝の変化の影響を受けた糖代謝異常、妊娠中に発症した1型糖尿病が含まれます。
いずれも分娩後は診断の再確認が必要となります。

【❸糖尿病合併妊娠】
1.妊娠前にすでに診断されている糖尿病
2.確実な糖尿病網膜症があるもの

糖尿病になってから多少時間が経過しないと糖尿病網膜症が出現しないため、網膜症がある場合は以前から糖尿病が存在した証拠となります。

④血糖値が悪いと母体と胎児にどのような影響が出る?

[母 体]→ 流産・早産、妊娠高血圧症候群など
[胎 児]→ 先天奇形、巨大児、胎盤環境の悪化による発育不全など
[新生児]→ 低血糖(母体から糖がいっぱい入ってきてインスリン産生が多い状態で生まれるため)

詳しくは図1にお示しします。

図1:妊娠時の糖代謝異常の問題点 図1:妊娠時の糖代謝異常の問題点

⑤治療は?血糖値の目標値は?

<妊娠前の管理目標>
[血糖コントロール目標]→ HbA1c 6.5%以下
[薬物療法]→ 妊娠前からインスリン治療に切り替える
[網膜症]→ 増殖前・増殖網膜症では妊娠中に網膜症が悪化することもあるため、眼科受診が必要。
[腎 症]→ 腎症3期以上では、妊娠中に腎機能悪化の可能性あり、妊娠前からの厳重な管理が必要。
[その他]→ 1型糖尿病では甲状腺疾患を合併することが多く、妊娠をきっかけに病状が進むことがあります。

<妊娠中の管理目標>
・HbA1c 6.0~6.5%未満 妊娠週数や低血糖のリスクなどを考慮し個別に設定する
・食前血糖値  95mg/dl未満
・食後1時間値 140mg/dl未満
・食後2時間値 120mg/dl未満

<治療> 食事療法とインスリン治療が基本となります。
食事に関しては以下のように妊娠時期に応じた付加を行います。

[妊娠初期(16週未満)]→
 標準体重x 30 kcal +付加量 50 kcal
[妊娠中期(16~28週未満)]→
 標準体重x 30 kcal +付加量 250 kcal
[妊娠末期(28週以降)]→
 標準体重x 30 kcal +付加量 450 kcal
[授乳中]→
 標準体重x 30 kcal +付加量 350 kcal
[肥満妊婦]→
 標準体重x 30 kcal

1回の食事量が多いと食後血糖値が上がりやすくなるため、分割食(図2)を取り入れる場合もあります。図2:分割食
栄養相談で分割食に関しても指導可能です。
また目標血糖値を達成するために、isCGM(リブレ)や指先での血糖自己測定が望まれます。
インスリン治療を行う場合は保険診療で、食事療法のみで管理する場合は血糖測定に関しては自費となります。

⑥産後の注意点は?

産後2型糖尿病に移行する方が多い(非妊娠糖尿病の7倍)ため、産後1~3か月の間に糖負荷試験を行うことが推奨されております。
もし、妊娠中に妊娠糖尿病と診断されて食事療法や治療をされていた方で、育児で忙しくて産後検査を受けられていない方がいらっしゃいましたら、当院でも75g糖負荷試験を承ります。

以前のブログで書いた非妊娠時の血糖値管理目標に比べると厳しい血糖管理目標ですよね。
現在の数値が高い方はこのブログを見て不安になられる方もいるかと思いますが、一人一人の状態や希望を伺った上で最適な治療法を提案し、不安を解消していけたらと思います。

「これから妊娠を計画しているが問題ないか?」 「妊娠中に血糖値が高いと言われて、以後検査は受けていないけど大丈夫なのか?」 「妊娠糖尿病と診断されたけど、治療はどうしたら良い?」など、気になることがございましたら是非お気軽にご相談ください。


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