持続血糖測定器とグルコーススパイク
今回は「持続血糖測定器(CGM)」についてお話します。
病院での採血以外で、ご自宅や外出先で血糖値を測ったことはありますか?
病院での採血だけだと受診時以外の血糖値が分からず、治療がうまくいっているか?血糖値が上がりすぎていないか?下がりすぎていないか?
など、糖尿病治療に向き合ったときに疑問になることがあると思います。
ご自宅や外出先で血糖値を測ることにより、血糖値の変動を捉えたり、低血糖を検出することが可能になります。
従来は指先の血糖測定器を使用していたのが、2009年より持続血糖測定器が日本でも使えるようになりました。
当初は、1型糖尿病など一部の方への保険適応だったのが、近年インスリン治療中の2型糖尿病患者さんにも適応が広がったり、単回使用であればインスリン注射でない糖尿病治療中の方へも保険診療の範囲内で測定できるようになってきました。
機器やスマホをかざすだけで血糖値が見れる機械、グルコーススパイク(食後の血糖値の上下動)の話題などでテレビや雑誌でも目にしたことがある方もいると思います。
近年は上記の適応拡大や、各社の良い機器の誕生により持続血糖測定器が幅広く使われるようになってきました。
【指先の血糖測定と持続血糖測定器の違い】
指先の血糖測定:穿刺器具で指先に針を刺し、ごく少量の血液をセンサーにつけると血糖値が表示されます。
持続血糖測定器:腹部や腕などの皮下に専用の機器でセンサーを刺して、間質液(表皮と血管の間の層)の中の糖を検出します(図1)。
血管から間質液に糖が移動する時間があるので、血糖値より5分~10分遅れて上がり下がりをするのが特徴となります。
リアルタイムに血糖値の変動を捉えることができ、寝ているとき低血糖が起きていないか、運動時に下がりすぎていないか、食事が多めだったけど血糖値がどうなっているか等がご自身で捉えることができます。
持続血糖測定器を使うと、指先の穿刺回数をなくせる、減らせるメリットもあります。
一方、デメリットとして、肌の状態や体質によってはテープかぶれしやすい方もいますし、
実測値より遅れて血糖値に相当するセンサー値が画面に表示されるため状況判断が必要となる場合があります。
具体的には、低血糖時にブドウ糖を摂取したときに、センサー値がみかけ上回復が遅くなるため、
まだ血糖値が回復していないと判断し糖分を摂り過ぎてしまうことがあったり、逆に高血糖時にインスリンを追加投与したときに、みかけ上なかなか下がりにくいと感じてしまうことがあります。
センサーが外れた場合や、明らかに予測と異なる数値が表示された場合は、指先測定も併用することが望ましいものになります。
【質の良い血糖プロファイル(血糖値の状態)とは?】
例えば同じHbA1cでも血糖値のばらつきが少ない方が、血管を痛めにくい(動脈硬化硬化が進展しにくい)良い血糖値の状態ということになります(図2)。
実際血糖測定器を使用する上で、指先の機器と持続測定器では血糖値の状態把握にどのような違いがあるでしょうか? 血糖値が70~180mg/dlを治療域(Target Range)とし、この目標範囲内の時間割合をTIR(Time in Range)と表現します。TIRの血糖値が70%以上(1日のうちの70%以上の時間が血糖値70~180の範囲内)あれば、 「質の良い血糖コントロール」ということになります。2019年の第79回米国糖尿病学会学術集会で発表され、現在の持続血糖測定器によるコントロール指標となっております。
日々の血糖値が上記のTime in Range内の収まっているかに関しては、指先の血糖測定のみでは分かりにくいと思われます。
自己血糖測定で血糖値を4回/日測定した場合、図3のように一見「まあまあ良い血糖値」に見えるかもしれません。
しかし、同じ日でも持続血糖測定器で見た場合、図4のようにばらつきが大きく、目標範囲内の70〜180より大きく上下している箇所があり、一日の半分以上の時間帯が低血糖か高血糖となっていることが分かります。図4だとtime in rangeは45%となります。
高血糖や低血糖を回避しながら血糖プロファイルを改善するためには、180より高い血糖(TAR)と70より低い血糖(TBR)を低く抑え、TIRの目標値を達成することが重要となります。
【持続血糖測定器の種類】
2023年5月現在、以下が国内で使用できる機器となります。当院でも順次採用していく予定です。
isCGM 間歇スキャン式持続血糖測定器(アボット社:フリースタイルリブレ):機器またはスマートフォン(iPhoneまたは一部Android)を皮膚にかざすと血糖値が表示・グラフ化されます。
低血糖時のお知らせ機能はありません。8時間に1回スキャンしないとグラフがつながりません。
リアルタイムCGM(メドトロニック社:ガーディアンコネクト、テルモ社:DEXCOM G6):機器またはスマートフォン(iPhoneまたは一部Android)に血糖値が表示・グラフ化されます。 低血糖時・低血糖予測時のアラート機能があります。
【医療費】
<isCGM(保険診療)継続利用>
対象:インスリン製剤使用中の方
測定日数:センサー1個あたり14日使用可能、月2個のセンサー(28日分)をお渡し
費用:約3,750円/月(3割負担)
<isCGM(自費診療)>
対象:希望の方、糖尿病内服治療中の方
測定日数:センサー1個あたり14日使用可能
費用:センサー6,000円/個(税込)、本体(初回のみ必要)4,000円(税込)
<リアルタイムCGM(保険診療)単回利用>
対象:1型糖尿病、低血糖が起きやすいなど血糖コントロールが不安定な2型糖尿病
測定日数:センサー1個あたり10日使用可能
費用:約4,000円/回(3割負担)
<リアルタイムCGM(保険診療)継続利用>
対象:1型糖尿病、低血糖が起きやすいなど血糖コントロールが不安定な2型糖尿病
測定日数:センサー1個あたり10日(または7日)使用可能、月3個(7日交換ものは4個)のセンサーをお渡し
費用:約8,000円/月(3割負担)
<リアルタイムCGM(自費診療)>
測定日数:センサー1枚あたり10日使用可能
[単回(初回)利用]
費用:15,000円程度/回(予定)センサー1個、モニター、トランスミッター
[継続利用]
費用:30,000円程度(予定)センサー3個(3か月に1回交換のトランスミッター代込み)
院内に在庫がある場合は初診時から物品をお渡しできる可能性もありますが、原則診察2回目以降のお渡しとさせていただきます。ご了承ください。
【自分には必要?】
高そうだし、スマホを使ったり面倒そうだし自分には必要?
若い人なら良いけど、私には要らないものなのでは?
という人もいるかもしれません。
例えば図5のように、朝食後に運動をした日と運動をしなかった日で食後の血糖値が大きく変わっていることが分かり、日々の食事運動療法のモチベーションや興味につながる可能性があります。
単回利用(10日間)でご自分の血糖の状態のチェックが可能です。
いつでもご相談可です。ご来院お待ちしております